夕方の囲炉裏のにおい

娘のソルフェージュの試験のあと夜8時過ぎに迎えに行った。車で5、6分の距離にある音楽アカデミーだ。ベルギーではスポーツをはじめ、音楽、絵画、あらゆる「勉強以外の事」が年間ほぼ1-2万円程度で教育を受けられる。そのために我々が税金45%を払っているようなものだ!

この後に及んでソルフェージュの送り迎えとはプロとしての母親の「プロだからこそ教えられない結果」なのだが、ここ2年ほど娘は一人でアカデミーの夜のコースを見つけてきてやっている。ヘ音記号をやっとこさっとこ・・の塩梅だが楽しんでやっている様子だ。きのうは彼女と一緒に試験前の一夜漬けもよいところで一緒に声を出してみた。
なかなかクリアな良い声をしている。昔ピアノをやっていて・・そのころ身についた絶対音感はあるみたいだ。あとは読むしかない。

言葉の一つと同じこと・・・とは私に父の考えだった・・・

私は今日また月曜の試験に向けて10人ぶっ続けで教えた。
私の不在中それなりにみなうまくなっている様子。波がある。それを把握してゆくことも先生の仕事だが。

レッスンから帰り、時差でほとんど(今寝たら爆睡できるのになあ~)と感じつつも夜のご飯を作る。今日は麻婆豆腐といり卵といんげんと3色ごはんにしようかなあ~~
目を覚ますためにワインを飲む?わけでもないのだがなんとしても起きていなければいけないのだ!

ふと思いついて「今しかない」と予てから気になっていた友達に電話する。とても才能のあるヴァイオリニストだ。なかなか会う機会はないのだが彼女が何やら挑戦する・・と言う話を聞いてすごく嬉しくなった!「何か私で出来ることあれば」思わず力が入ってしまう。損得になしに教えたり秘術を伝授する謂れはないのだがこれも縁!

そして娘を迎えに行った。(念のために言うとベルギーでは少々の飲酒運転は許される)
アカデミーの前に車を止め外にでる。春の湿り気のある空気の中、豆腐やのチェルメラさえ聞こえはしなかったもの、はっきりとお風呂の薪を焚くにおいがしてくる。

思わず深呼吸。

これから訪れる(夏の季節)に想いをはせる。いつも感じるわくわく感だ。

その向こうに満面の笑みをたたえた娘の顔

「ママ、試験簡単だったよ、でも歌って嬉しかった!」

そうだ!こういう方法もあるのだ。音楽はプロだけのものではない。苦労・・と言う事を抜きにして、万人に楽しむ可能性がある。

春の夜のひとり言。こうやって季節はめぐってゆく。

2011年2月24日 ブリュッセルにて
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