体が整う

ブリュッセルの我が家で活元会を始めた。活元運動とは準備運動のあとポカーンとしていると動きだす体の動きだ。野口整体から学んだ。
昨年生徒たちと始めて、そのうちブリュッセル在住の人から連絡があって・・・全く気ままに気の向いた時に行っている。不思議と時間が合うもので5~6人は集まる。だんだん居間もそういう雰囲気になってきた。

ここに初めて住んだ89年。広いデユプレックスのアパートは見事に片付き、きれいに掃除され、和室も造り、独身の贅沢を味わっていた。

結婚して2人になり、また子供が生まれ、あれよあれよと場所がなくなっていった。こどもというのがこんなにスペースを取るものだとは知らなかった。

2人目が生まれ居間はほとんど遊園地と化した。その年代に応じて遊具も大きくなり家の中にトンネルが出来たり、うちが出来たり・・はたまたジャングルジムまで作った。その時彼らが登って天井につけた(手あか)は一度ジャングルジムを解体するともう手が届かなくそのまま残っていた。

天井の「しみ」と付き合う事3年。建物の一番上という好条件と思って決断したペントハウスだが要するに(雨漏り)の被害は一番に受ける事がわかったのは最近の事だ。テラスからの浸水。いや壁が古くなって水がしみこむ・・・ドアの枠が腐ってるんじゃない?あれやこれや言われ、設計士が4人もやってきてそれでもなかなか浸水は止まらない。ついに3冬目を迎えどうにか解決策を見出した。いやはやこの国での物事の進むのが遅い事とそれでも成し遂げる姿勢にはあきれるやら感心するやら!

ついにその後乾くまで半年待って今年の夏に天井も壁もきれいにペンキが塗られた!
子供たちがつけた天井の「手あか」もなくなった。

その子供たちは二人とも私より背が高くなり、それぞれの部屋にこもってそれぞれの時間を過ごすようになった。

だんなは(仕事部屋)を見つけた。

居間はまた私一人のものとなった。

活元運動は私たち皆素人の集団だ。だがみな音楽家であり体の感覚は敏感かもしれない。気も通りやすい。
何より恩恵にあやかっているのは私かもしれない。
夏から続いていた(食べすぎ)。頭ではわかってはいるもののついつい・・・食事を作らなきゃ。食べないと教えられない,今食べておかないと・・・等々いくらでも頭では申し開きできるのだが体はそれを要求していない。おのずから食べ過ぎの脂肪もお肉も全てお腹周りにたまっていく。
それよりなによりやる気がなくなる。心の底から楽しくなくなる。全て(義務)で行動するようになるからだ。

気持ちよく運動が出て合掌行気をした後の手で愉気をしてもらった。
やっとお腹がぐうぐうなりだした。

そしたら楽しい空想が湧いた!「あ!こうしたら楽しそう。」

それ以来水が良く飲めるようになった。だいぶ(ぎくしゃく)していたらしい。私の体・・・

自らを整えると言うのはこういう事だと思った。同じ世の中が違って見えるから。日曜のマーケットで焼いている鳥を買う行列に並んでもいらいらしない。時間があったら「ピアノ弾こう」と思ってブラームスの間奏曲をひもといた。私自身が学生だった頃ピアノは好きで良く弾いていた、「ご飯ですよ~」と言われるとなぜかピアノ弾きたくなって良く母親に「早く来なさい!」と怒られた事を思い出した。

暗いヨーロッパの冬にブラームスの間奏曲はよく似合う。短調の中の湧きあがるような高揚感。ほのかな灯りをともす長調の一部分。きれいになった居間で1人ピアノを弾ける楽しみ!

体が整うとこんな(贅沢)を心から味わうことができる。

2011年1月10日ブリュッセルにて
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