力を入れる

ヴァイオリンを弾いていて、どれだけ「力が抜けるか」は重大なポイントだ。力が抜けていれば指もよく回るし、何よりたくさん弾けるだろう。持久力もでるかもしれない。音も伸びるかもしれない。

では指をまわす・・・のには力が要らないのか? たくさん弾く時、筋肉は使わないのだろうか? マラソン同様走ってゆく・・・ヴァイオリンを構えて弓を持ち上げ、いろいろな速さの弾き方をするとき、どこの筋肉を使うのだろう。

ベートーベンを弾く時、力を抜いて、どうやってアパッショナート、エスプレシーボの感情を込められるのだろうか?

大切のことを伝える時、力を抜いて、へらへらと話したら、はたして相手に伝わるだろうか?

腹(丹田)に力を入れて・・・とは昔から言われてきたことで、最近の「楽に弾けるように」の風潮はもしかしたらこういう日本古来の考え方に対抗するような処もあるのかもしれない。

しかしながら、ヴァイオリンを弾くことは楽なことではない。

往年の名チェリスト・ピアテイゴルスキーは生徒が
「先生、どうも気分よく(comfortable)、弾けないんですけど、どうしたらいいですか?」

「もし、comfortableになりたかったら帰ってベッドで寝るといい」

力を入れること、その場所をわきまえたならばおのずから「抜く」場所もわかる。全力投球とは何もいつもいつも力を入れていることではない。、緩急の呼吸!そう呼吸とはまさに「吸う、吐く」の繰り返しではないか。

というより、「そんな次元でジタバタしてるよりもっと他に追求することいっぱいあるよお〜」と声を大にして言いたい。

そうじゃなければ「帰ってベッドで寝ればいい」のだが、このごろは床についても「もんもんと」それこそ力が入って寝られない人が多いのだから、まったくどうしようもない。

これも近年の「名言」
「寝られないんですけどどうしたらよいでしょう・・」
「寝られなければ起きてればいいでしょう」

2009年10月12日 ブリュッセルにて
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