ベートーベンのソナタ

秋に行うベートーベンのソナタを仕込んでいる。
「練る」・・の言葉どおり、一辺倒ではいかぬよう、「もうひと工夫」。
なんでもないメロデイーからどれだけのものを引き出せるかはまずどれだけ自分が感じられるか、だ。
そしてアイザック・スターンの言葉ではないが、「聞いてもらえますか?」ではなく、「聞け! Listen to me」といった態度で臨まなければ、聴衆の心をゆさぶることなどほど遠いまた夢の夢。

この「5分」にかける。3つの音をどう弾くか?考え尽くす。
あとで忘れたって良い。そのプロセスさえ覚えていればそれをなぞることによって同じ感情移入ができるようになる。

3つの音のなかに世界がある。失望があり、どん底があり、そして何やらうごめきが起こり、次の3つの音は少し平和になる。心から「温かさ」を感じて弾く。ピアニシモのほとんど聞き取れない音でもだ。
6度の音程間隔は「エモーション」感情の高まり。ピアノでも。クレッシェンドでも。そして和音、特に「バス」の推移によってその3つの音がいかに「重いか」「軽いか」決まってくる。和音は感情の現れ。どんなところに持っていかれるのか?今できたてのように弾くには今できたてのように感じて次の和音に進まなければ。体ごと、心すべてその「音」に授けよう。

これこそ、ちょっと「キザ」な言い方をすれば「音楽の僕」たる醍醐味というものだ。

2009年1月末 ブリュッセルにて
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