母が家へ・・
今日は明日の父の命日の為に母が家に戻った。と言っても数時間の話だ。まず私達子供と孫がお墓の掃除をして花を生け・・お盆のせいか花売り場の人がちがい、ぞんざいに花を扱う「そんなに押し込んだら潰れちゃうでしょう」と思わず言ったが返答なし。おつりの金勘定ばかりは妙に丁寧なのに腹が立ちそれを妹に言うと「そんなかりかりしなさんな・・・」と諭される。まだまだ修行が足りない私だ。
正午を過ぎたばかりの日中の日差し、それに蒸し暑さも尋常ではない。昔のように・・・と以前大人たちが口走っていたのを嫌悪感を持って聞いたものだが自身その年代になったのだ。昔のように「からっと晴れた」夏空はない。いつも蒸し暑さがつきまとう。そのために冷房は手間なく運転する。ますます外気温はあがる・・・
それでも3時、4時過ぎると陽の光も衰えを見せる。やっと少し活動してもいいかな~という気分になる。待っていた母を施設に迎えに行き、今日の「スケジュール」はまずお墓参りだ。お盆のせいか道もすいている。すいすいとお寺さんにつき、線香を片手に水汲みの桶を持ち、母の手を取りなんとか歩行する。足元だけ見ている母に「あんた、面白い靴はいているねえ~」と言われた。
10メートルほどで父の墓石に着く。水をかけ、汚れをたわしで落とし、みなで合掌。にぎやかな花同様に何とも賑やかな墓参りだった。「時が来たら迎に来てね」と母。
それから商店街を車いす押してアイスクリーム屋へ直行!「ソフトクリームが食べたい!!」というのがたっての母の願いだ。いつもひとり、施設で空を見て暮らしている母にとって商店街の喧騒もまた子供の声も嬉しかったらしい。アイスクリーム屋では車いすから降りてベンチに腰掛けて「美味しい、美味しい」とバニラアイスを平らげた。
また商店街を通り、いつもの道を通り我が家へと。「帰ってきました~~」
定位置の自室の窓際に椅子を置いてしばし外をながめていたが「みんなのいる台所に行きたい」
そういう事でわいわいがやがや言いながら・・は私ひとり、すし飯の「すし酢がない」
「ねえおばあちゃん、すし酢ってどうやって作るんだっけ?」「酢と塩と砂糖」
トウモロコシの天ぷらの粉加減が難しい「こんな感じ?」「そうそう」
茄子をあげて生姜醤油で食べるのはいかにも夏らしく本当においしい。
「トウモロコシと茄子とどっち先かなあ?」
「茄子でしょう」
「すりこぎどこだっけ?」
「たしかあそこ」
あった!
海鮮丼のたれをゴマダレも作ってみようと挑戦。
「よくやるねえ~」
いやいや全てあなたのなさっていた事ですよ。
1年半に大腿骨骨折、リハビリをしてなんとか杖で歩けるようになった去年の夏、今度は「ちょっとカッコつけようとしたの」で転び今度は反対側の大腿骨骨折をしてしまった。
我々は暑い夏にバスを乗り継ぎ病院に通った。
9月に自宅に戻ったがそれからなかなか思うようにいかず。ヘルパーさん、デイケアサービス、ケアマネさん、みなとても良くしてくださった。しかし24時間そばにいるのは隣に住む妹夫婦のみだ。妹一人では到底見切れなくなり、また高血圧が続いて4月に救急車で入院。
もう一人で生活するのは無理です、という医師のお墨付きをもらい、母も妹もほっとしたところがあった。
幸い飛び込んだ施設の方々によくしてもらっている。
私が日本に戻る際一度は帰宅してもらいたいと機会を設ける。
母を妹夫婦が送る間息子と皿洗いしながら「おばあちゃんいなくなったら寂しいよね」
「うん・・」
あとは無言でそれぞれの世界に戻った。
きっと母も今日の外出の疲れもあり、今頃はもう寝てるかな?あるいは興奮して寝付けないかな?
雨が降ってきた。
「良かった、さっき降らなくて」
2017年8月13日東京