バッハのCDが出ます

3月18日にエクストン・オクタビアレコードからバッハのソロソナタ・パルティータのCDが出る。
足掛け最初のBWV1006プレリュードから考えれば50年近くの年月がかかった。
かといってこれで終わりでもない。
録音そのものはちょこちょこ取ったのでそれほど「一気に」やった、チェコフィルとのブラームスのコンチェルトのような負担はなかった。なんというか毎日行っている作業をちょっときれいにしてマイクの前に立ったという気持ちだ。
これは人によって異なるがだんだん録音していくうちに味が出てきて、いろいろ深みが出る演奏家もいれば、私のようにできているものを演奏会で弾くように数回弾いた方がうまく行く人もいる。
エンジニアの江崎さんとの共同作業だ。音は私が出すのだが実際マイクを通して機械で出てくる音を作るのは彼。変な言い方だがその造られた音が気に入らない事もあるのだ。
全6曲あるバッハのソロソナタトパルティータ。一つ目は昨年3月に録った。「相模湖文化ホールというとても響の良いホールがあるので見に行きませんか?」と江崎さん。今までもプラハの教会3つ、イタリアの劇場等見て歩いて決めかねていたので、「それでは」と唯一空いてた休日に出かける事にした。その上どうせ行くのならば録ってみようと1番のソナタを収録。会場は確かに申し分のない響きだった。そのころの演奏会で弾いているものなので本当にそのまま持っていった。
2回目は暑い夏の事だ。バッハ三昧になれた2週間ほど、ブリュッセル、クラステレック(チェコ)釜石と弾いてきてこれも一気に3つの曲を録った。
本当は10月に終わりにしたかったのだがあまりの過密スケジュールでもう体力も気力も残っていなかった。ここで無理して指を壊すより、と今年1月まで待った。
正月明けの5,6日にすんなりと後の二つパルティータ、2番と3番を録った。

なので「やった!終わった!!」という感覚ではない。またまた日常でバッハを弾いている日々が続いている。

それでもこのようにきれいなジャケット写真も撮っていただき、諸石さんの賛辞もいただき、今回CDが出る事になった。なかの文章も曲を追って書いてみた。「神との対話」を全く考えなかった事にあとからグレン・グールドのインタビューを見て気づいた。私にとっては宗教を越えた自然とのかかわりがあった。人との対話もあった。これがもしかしたら私の「神」かもしれない。
バッハは一人ケーテンの小さな教会でこれを書き上げたという。BWV1001-1006と一気に書いた感があるがどうも構想はかなり前から練っていたようだ。
「クラシック」という名前のごとく数少ない聴衆かもしれないけれど普遍的に聞き継がれるバッハは彼の時代では先鋭的、そして今も毎日何かしら発見する事のある新鮮な作曲家だ。
時代を越えて残るもの・・・
数ある演奏の一つに加えていただければ幸いです。

                    2016年2月末ブリュッセルにて






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