子供たちの旅立ち

春秋社から本が出た!
「ヴァイオリニストの領分」と言う題名でホームページ10年間のyuzunoteをまとめたものだ。
ちょうど子育て絶頂期のような子供たちが小さい頃の事から始まる。
表紙は左門が12歳の時に書いた「きれいな星たち」夏のある日みんなの思い出いっぱいリュックサックに詰めて旅にでよう。愛する人を見つけるために・・・
それに道子が絵を付けた。

そんな彼らも奇しくも9月から本当に独立する。
道子はエラスムス留学でロンドンへ。
左門は一応マストリヒト大学へ。一応というのはヨーロッパの大学は入るは簡単出るは難関、なのだ。試験を通らなければ留年。ダメで退学、となるケースもある。これは一般大学に限らず音楽院も同じだ。学生たち、特にバッチェラーの生徒たちはそれこそ必至になって勉強している。

マストリヒトとロンドンでは自宅からは通えないから独立して住む事になる。

旅立ちだ!

頭では分かっているものの寂しさは隠せなかったのだろう。
特にずっといるように思っていた道子も「ロンドンで受け入れられたの!」と嬉しそうな声で報告してきたときの「ああ、この子も出て行くのか」という想いはあった。
それだけ頼っていた?ところもある。
料理を作れば「これ美味しいね」
「もみじ~」(私のあだ名。彼女が付けた)とすり寄ってくる。

何だか左手の中指がおかしいなあ~と1か月ほど。バッハのソロ3曲とか暑さとか、しかしこれは頭の系統の疲れだ、と整体の先生に言われていた。

暑い中無事録音も終了して活元会に参加した。
ブリュッセルの「アマチュア活元会」とはちがい、金子先生指導のもと私の生徒達も2人加わった。新しい人と相互運動をした。思いがけない動きが出る。
そのあと金子先生に操法をしていただいた。

自分では録音終了と同時にヴァイオリンどこ行った?の数日間で手の痛みなどすっかり忘れていたのだが最後に右手の中指、その前に左のアキレス腱が随分硬くなっていることを気づかされた。

「人間の体って何かショックな感情の起伏があるとそれをどこかで受け止めるんですよね。」と金子先生。それが左アキレス腱だったらしい・・・どうりで左の足の裏が吊ったようになった感じやらそれに関連する右のどが痛かったりした事もあった。
バッハの暗譜とコンサートだけではなくその前に子供たちがいなくなっていく・・そのからっぽ感をなんとか頭で考えて埋めようと四苦八苦していたようだ。
どんなに「自分の時間ができる」とか「集中できる」とか言ってもこの本物「空の巣症候群」は否定できるものではない。

アキレス腱が緩み、あくびが出てきて、「今日あまり頭回りません・・」となったら急に哀しみが込み上げてきた。

本当にもうブリュッセルに帰っても彼らは家にいなくなってしまうのだ・・・

へらへら笑って、まとわりついて、そんなことがなくなってしまうのだ・・・


さて・・・旅立ちを晴れやかな顔で送ってあげよう。
思えば短い間だったな、彼らとの付き合い・・

皆味わう「別れ」の親心、世代交代…まではいかなくとも時の流れを感じます。

                2015年7月末東京にて




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