世代交代

6月というとこちらヨーロッパでは年度末、怒涛のように多々ある試験もすべて終わり結果も出てあとは卒業を待つばかりの生徒達、子供たち、明日からバカンスという人も多い。最終レッスンに来た子が大きな荷物を抱えている。
大移動の渋滞が始まるのもそう遠いことではない。

そんな中私も娘道子がアシスタントを務めるバーゼル・アートフェアに行ってきた。なんとトヨタIQという4人乗れるけど実際は二人乗りの車運転して!バーゼルまでは6-7時間。小型車の高速運転はきついだろうと思っていた。生徒の一人が付いてきてくれた。ふたりでおしゃべりしながらの道中も楽しいものだった。

無事バーゼルに到着、娘が雇われているパリの画廊のスタンドに直行する。アートフェアの中でも静かな雰囲気を醸し出すデザインセクションに座っていた彼女。眼鏡をかけ白づくめのおしゃれな恰好している。私は日本に行って以来彼女に会っていない。思わず駆け寄る。緊張していた彼女の顔がほぐれる。日本語で「よくやってるね」と声をかけるとこちらもほっとした気分になるのだ。

こんな日が来るとは夢にも思わなかった。

つい最近までいつでもいるものと思っていた彼女も21歳だ。グラフィックデザインのバッチェラー(大学)の資格を取り、来学期はロンドンの大学にエラスムス交換留学生で行く事になった。独り立ちだ。

息子左門もさっき「公式に高校卒業」と珍しく電話をかけてきた。その彼も9月からマストリヒト大学の国際ビジネス科に入学が決まっている。やはり一人暮らしを始める。

私が「忙しい、忙しい」と疲れて帰ってきてすぐに彼らの料理を作る事もなくなり、「お帰りなさい」と言ってくれる笑顔もバタバタと足音を聞く事もなくなるという現実はきっとかなりつらいものだと思う。

こうやって皆親たちは子供を送り出していったのだろう・・・

今日は2001年最初にここブリュッセルのコンセルバトリーで教え始めた当時の生徒が結婚して子供二人連れて遊びに来た。今彼はマレーシアのオーケストラで弾いているので夏休みを利用しての里帰りだ。

ちょうど彼らが学生だった頃うちの子供たちが3歳5歳・・今の彼らの子供たちの年頃だった。当時はよく遊んでもらった。一緒にクルシュベルの講習会にも行った。夏になると近所の遊び場でテレーズおばさんがバーベキューをする。夜中まで子供たちが駆け回り、私と生徒がヴァイオリンを弾いたりしたこともあったなあ~
彼ら生徒たちにしてみると私はその時のお母さんのイメージなのだろう。
しかしながら年を取ると昔あんなに子供を追いかけまわして動き回っていたことなど全く忘れてしまった!億劫でさえある。
逆にひょろひょろしていた元生徒たちがたくましく子育てしているではないか!

自分の子供がそうなるまでは後10年ぐらいかかるかもしれないけれど、そしてこれからの大学生活を支えていくのに親がもっと働かなくてはいけないのかもしれないけれど、とにかく「一世代終わったんだな」という感慨はまぬがれない。

とともに「はてこれからどうやって生きていくのだろう?」と真剣に思う。

人との出会いは本当に得難いものだ。
そしてその絆はそう変わるものではない。
それは嬉しい事だ。
しかしどこかに「一人」の自分がいる事に安らぎを覚える。
弧ではなく独・・この意味の違いが感じられるようになったのも年を重ねた恩恵によるものかもしれない。
                        2015年6月ブリュッセル




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