5月の光

1ヵ月を美しい春の日本で過ごし、帰ってからも忙しい日々が続いた。

働き盛り…は、もう過ぎたであろう年齢にはきつい。



それでも正直な体は昨晩12時間ぶっ続けで寝たらなんだか回復しちゃった!



目の疲れ、肝臓の疲れ、頭と胃の疲れ・・・

なんだか知らないけど眠ることができれば昨日までうまく動かなかったモーツアルトのパッセージも難なくこなせる。

これって昨日練習したおかげ?それとも眠りのなせる技?



外に出る。眩しい陽の光、思わず目を細めたくなる。

5月というと学生は6月の最終試験に向けて、大学はもう大体授業も終わりつつある。私の生徒たちも「先生あと何回レッスンありますか?」と聞いてくる。早く故郷に帰りたいのだ。

あとはバカンスが待っている!



アパートのはす向かいに住むおばさん宅は窓枠をすべて変えたという。「見て見て」というので初めて彼女のアパートに足を踏み入れた。偶然エレベーターで上がってきた同じ9階の隣人たちもやってきた。

ビルの上のほうで北風の寒さは身にしみるものがある。これで寒さからもだいぶ解放されるよ、とか話しているとふと彼女が「今日何の日だか知ってる?」という「隣人の日、5月16日、ヨーロッパ議会のね。」

このヨーロッパ議会というのは実に複雑だ。欧州議会(European Parliamentとその下にある欧州委員会(European community)とかれこれ何年??住んでいる私でもなかなの実態はつかめない。たとえばヴァイオリン押収事件のあとヨーロッパの税関での法律が変わった・・のは、欧州委員会のバローゾ委員長のサインしたもの。欧州議会の初の大統領は我が国のヴァンロンパイだ。この方はアメリカ大統領に匹敵する職なのだが、あまり目立たない。そのへんがヨーロッパかな?俳句も読まれる。

3月にオバマ大統領が来た際は3人で写真に写っていた。



ベルギーはその複雑怪奇なヨーロッパ政治の中の典型的な国だ。ここを見ればヨーロッパがわかるという人もいる。

今月25日に行われるベルギー総選挙ではフレミッシュ右傾が勝利を収めるとされている。それに応戦するフランス語系の政治家たちは「あなた方国を壊したいのか?」という。

王室の存在、もともとこの国ができたときのいきさつは?カトリック系フランス人とカトリック系オランダ人が一緒になりドイツから王を迎えて成り立ったのだ。先日見たテレビ討論会では両候補者にアナウンサーも含めフランス語とオランダ語でやる。フランス語のテレビ局ではオランダ語分は字幕が入るがワイワイやっている討論中、二人の候補者は相手の言っている違う言語の言葉を完全に理解しながらも自分は母国語を話すわけだ。統一して話を進めたほうがよっぽどやる方も聞く方もわかりやすいだろうに!

エリザベートコンクールの発表に至ってはこの上英語も加わるので毎回「では発表します」から1位の名前が出てくるまで時間がかかること!3ヵ国語目の英語のころになると聴衆から「はやく!!」といった焦りの声が聞こえる。



いいんだか悪いんだか・・・要は3分の1しか要件が伝わらないということなのだが・・・それともおしゃべりなんてそんなものかな?



ヨーロッパの国の境界線は全く複雑だ。アルザス地方などドイツ、フランスを何度行ったり来たりしたことか。

その境界線があれよあれよと即日で変わってしまう恐ろしさを表しているのがクリミア半島、ウクライナ。だからみな結構真剣に心配している。

ロシアという大国にかかればベルギーなんて一ひねりもないだろうから。

以前に2度助けてもらったアメリカの力も今や下火になっている。そういえばオバマ大統領訪問から始まってこのところ各国の要人がブリュッセルにやってくる。安倍総理もやってきて昭恵夫人にはコンセルバトリーを訪問していただいた。生徒の演奏、復興コンサートのヴィデオ鑑賞、また団らんと短い時だったが大変栄誉な時を持たせていただいた。

6月にはG7が開催され、また交通規制が厳しくなるだろうな。何しろ通りを歩けない。横断禁止。昨日も何やらのデモでコンセルバトリーに入るまでにバリケードが築かれていた。そばにあるパレ・デ・エグモント(エグモント宮)でいつも記者会見が行われるからだ。「検問」にかかり「学生証を見せなさい」と言われた私。思わず「あなた親切な方ですね~~私そんなに若く見えますか?一応教授ですが・・」警察のみんなと大笑いした一幕もあった!



なんと言ってもこのさんさんたる太陽の恩恵にあやからぬ手はないと、金曜早々と仕事を終えた人たちは今テラスで日光浴している。そういう私も珍しくテラスに出て鳥小屋の世話をしたり、片づけたり。



自然の前では人皆同じ欲求がある。

音楽で言えばこれからドビッシーとか・・イベリア組曲とかが似合う季節になってきた。



あすにはブラジルの大ピアニスト、ネルソン・フレールのピアノリサイタルを聞きに行く。

2014年5月16日

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