ああブラームス!

7月下旬に名古屋フィルとドッペルコンチェルトを弾いた。そのあと8月末に待望のチェコフィルとの
ブラームス、ヴァイオリンコンチェルトとドッペルコンチェルトの録音があった。
私が今まで弾いたオケの中で一番うまかったんじゃないかなあ・・・チェコフィル、バカンス明けの
朝9時からばっちり録れた。そのミュージシャンシップ、自分達で音楽を作る、できる、最後のプルトまでばっちり合って、私のどんなニュアンスにも応えてくれる。そして戻る、彼らの音楽に乗っかって、
波に乗っかって音楽ができた。

恐れていた2日間だけのリハを含めた録音時間も両日とも悠に1時間半以上も残して終えることができた。130以上あったテークの中で彼らの間違いは10か所あったかなあ・・・というか元フィリップスの
名プロデユーサー、エルドさんは見事に私たちの力を引き出してくれる・・・

夢のような時間が終わり最終日には宝石のようなプラハ見学までして帰ってきた。

9月・・・子供達の新学期が始まる。何やかやと忙しい。その上課外授業として今年から日本語とピアノ、それに引き続きクラフマガをやる息子。グラフィックのほかに日本語とダンスとその他もろもろ忙しい娘。彼らのためにしなくてもいいタクシー業におさんどん・・・コンセルバトリーも追試を含めて始まった。10月いっぱい留守にする先生としては早くからレッスンも始めた。

あと数日で日本に発つというおとといごろから喉が痛い。

もうこちらは朝晩ひとけたの温度になることもあった。かと思えば反対にこれ以上の好天気は考えられないのではないかと思うほどの晴天に風が優しい秋晴れの日もあった。デリシャス!

バッハーブラームスシリーズが始まる。
風邪をひいたからだに練習はきつく、ぽっかり空いた3連休はもっぱらピアノ譜をひも解いて眺めている。ピアノ5重奏の2楽章。
名古屋フィルのブラームスのシンフォニーの一番、ゲネプロを聞いていて時間でふと外に出た時
後ろ髪をひかれたような思いの4楽章への転換場面・・・E-durの調性の妙、2楽章、A-durの明るさ、
2番のピアノカルテット、そしてd-mollの深淵、3番のヴァイオリンソナタ・・・

オーストリアに住む友達が「ブラームス博物館」の話をしてくれたことがあった。それも思えば
今年の事だ。イタリアのコンクールの審査で知り合った彼女は「ブラームス博物館はね、庭も含めて、
彼が散策したところが残されている、よく食事したレストランとかね。それにね、彼は自転車に乗るのが
好きで、電車で数駅登って行っては帰りにす~っと自転車で降りてきたんだって」

へえ~あのブラームスが風に吹かれ心地良さそうに自転車大滑降か・・・

そんな風に実は弾いてみたかったな、コンチェルト3楽章のパッセージ、オクターブの前。

ピアノクインテットは作品34,30歳ごろの作品。ヴァイオリンコンチェルトは作品77、45歳、昔で言えば私の年ぐらいの作品だ。そして続くインテルメッツオたち・・・簡潔になってゆく音たち・・その中で
いつも彼の(歌)は同じだ。

奇しくも「ドボルザークのゴミ箱からでいいからメロディーを盗んできたいよ」と言ったブラームスの
作品をプラハのドヴォルザークホールという名劇場で録音することができたのも、なんだか奇跡のようだ。

暖かな人間に包まれている感じがする。

感謝。
          2013年9月末ブリュッセルにて

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