仙台国際音楽コンクールから


飛行機に電車を乗り継いで仙台駅に着いた。5月24日のことだ。
新しくホテルウェスティンにチェックインする。高層ホテルだ。震災の折、26階レストランの皿が一枚も割れなかったという・・・

28階の部屋に着く。新しい作り、お風呂場も仕切られているが不透明ガラスで圧迫感がない。テラス・・・には出られないのだが広々とした間取りは何と心地よいことか!安心できる。
ふと遠くを見ると・・・海岸が見える。
本来ならば、「あ!海だ」と思うところだが、被災地となり、音も人もなくなった光景は実際現地に行ってみなければわからないことだ。忘れていたわけではない。

その大震災を乗り越えて仙台国際音楽コンクールは無事行われた。
いや、無事どころではない、私たちはホテルばかりではなく、3年ぶりに訪れた青少年センターの音の響きにびっくりした。以前残響が多すぎる等非難の声もあったこのセンターの音響は今日聞くモーツアルトにふさわしい豊な、そして素晴らしい響きに変わった。
そして各地からやってきた室内オーケストラの質の高さ、仙台フィルの(よくぞここまで来た)と感慨に堪えない響きに仙台人の底力を感じたのは私だけではなかった。

あたかも何事もなかったかのように・・・物事は進められ、しかしながら宋審査委員長の(講評)の折「よくぞ皆さまこのコンクールを続けてくださいました。みなさんの音楽への深い理解、そして愛情を感じて私は心を打たれました」との声が聞こえた時、胸がきゅんとした。幾柄にも重なる修羅場、思い出、そして再び音楽をできる喜びに胸打ちひしがれた方を多かったと思う。

世界中から集まった若きヴァイオリニスト達。16歳と言えば息子の年だ。それで私たちがひくようなレパートリーを難なくこなす。21歳と言えばまだまだ若いと思うのに彼らの間では5歳もの差がある!

いろいろな思いを残してコンクールは終わった。

改めて思う。復興、というのか底力というのか・・・

なんとも(すごいもの)を見せていただいたと言うのが正直な感想だ。
もう怖い事は何もない。前進あるのみだ。祝仙台市民!!
せんくらに向けてまっしぐら!            
            

                        2013年6月ブリュッセルにて

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