4人のヴァイオリニスト

2月日本で「4人のヴァイオリニストたち」という初めての企画に出演しました。
それも私を含めて女性だけです!
以前のわたしならとても手を出さなかった分野ですが「なんだかおもしろそう!」ということで引き受けました。 仙川の古き我が母校、桐朋学園大学で練習があります。
初顔合わせの川田さん。かわいらしい人。私が入っていくと合わせていたクライスラーの曲を弾きながらぴょこっとあいさつしてくれました。
久しぶりの戸田弥生ちゃん。2児の母となって貫禄あります。「今が一番体力いるよ」と一応先輩らしい!ひとこと。
加藤知子さんとはなんと5歳のときから一緒に勉強しました。桐朋の音楽教室から、久保田先生、江藤先生とお習いした経緯も同じ。その後彼女はアメリカ・ジュリアード音楽院に留学し、私はヨーロッパにいたので、あまり会うこともなく・・・数年前に私との「ソロとデュオの夕べ」に出演をお願いしてから、今回のプログラムも彼女と検討・・・といっても90パーセントは四方山話に花が咲いて!でしたが。

さて、4人がなんとなく距離をとりつつ、練習が始まりました。
テレマン4本のヴァイオリンのためのソナタ。
『美しい!』
思わずわれわれ自らさけんだものです!
4本もヴィオリンがいたら、さぞかしキイキイとうるさいだけで、どうやって1回分のコンサートにするんだろう?と半信半疑の私(みんなもそうだったようです)が、『目』からうろこ!ならぬ、まったく『発見』したのが、この「テレマン」のソナタでした!そして続く2曲目も、調性が変わると、まったく違った音楽を展開します。
「テレマン」捨てたものじゃないなあ!というのが正直な感想でした。
続く練習は、バセヴィッツの4本ヴァイオリンのための曲。ポーランド人で自らも優れたヴァイオリニストであった彼女は他にもヴァイオリン数本によるアンサンブルの曲を残しています。今回の作品はなかなかおもしろかったです。
ファーストヴァイオリンは加藤さん。お弟子さんたちの演奏を聞いて「私もやってみたくなった」という彼女の推薦でもあります。

そして何より私たちを「笑いの渦」と化したのは、加藤さんとまったくランダムに選んだはずの4人の位置。要するに「誰が、どの曲で、何番ヴァイオリンを弾くか」という設定が、あまりにわれわれの性格と一致していた!ということです。
「川田、これ弾きなよ!」
と一番年下の彼女は呼びつけられ、いきなりフンメル(ドイツの20世紀の作曲家)のファーストヴァイオリンの楽譜を渡されます。
「え・・・私セカンド練習したんですよお!!」との訴えもむなしく、第一ヴアイオリンを「初見」で弾かされる彼女!見事なものです。なによりその曲想が彼女ぴったり!!
そしてそのあと、彼女が弾く曲、弾く曲、「こっけいな」場面に出会います。バセヴィッツの4番ヴァイオリンの合いの手や、モーツアルトのセカンドにいたっても原曲では考えられないような、伴奏リズムが突然登場!「何でまた私!!?」と悲鳴があがり、私たちは、おかしくて弾けなくなるほど笑うのです。まったく「この笑いのために私は帰ってきたのだ!」と納得します。
弥生ちゃんは、バセヴィッツのセカンドヴァイオリンなのに、突然、「こけこっこお!!」ならぬ「掛け声」がかかります。何度やってもみな顔を合わせて笑わない努力!です。
モーツアルトの魔笛は、私が、ファーストヴァイリンを弾かせてもらいました。4本のヴァイオリンでは少し無理なところもありましたが、さすが「名曲!」すべてオリジナル曲想がカバー。普段は決して弾けないような有名なアリアを「ヴィオリン」で、弾けるのも、ありがたい話です。モーツアルトのどのヴィオリンソナタをとっても、またヴァイオリンコンチェルトをとっても「魔笛」のアリアに匹敵するものはありません!
これを選んでアレンジしてくれたウィーンのヒロ・クロサキさんたち。ありがとう!


さて翌日本番です。川口リリアホール。私はとにかく前日に帰国したので「時差」には慣れているとはいっても、体力的にも充分寝ていない体は通勤にはむいていません。妹が電車に乗ってついてきてくれるのが大助かりです!なにしろヨーロッパから帰ると新宿の雑踏を、めまいすることなく、右往左往することなく、通過できるようになるまでに数日かかりますので・・・
本番前、思い思いの4人の姿。子育て真っ最中の弥生ちゃんはソファでひっくりかえってます。さぞかしくたびれているのだろうなあ。彼女はバッハ・シャコンヌを弾かなくてはいけません!加藤さんはステージで練習に余念がありません。チゴイネルワイゼンです。川田さんの「クライスラー小曲集」も、はっきり言って一番難しいかもしれない・・それもトップバッターソロとして!
私は「ドレスが入んない!いつのまにこんなに太った??」

満員の聴衆の前、4人が艶やかなドレスで登場。(近年になく派手なコンサートでしたよ、と後で言われました)テレマン。ホールの響きもあいまって4人の音色に磨きがかかります。練習した「落ちないようにするスポット」も無事通過。
いやはや彼の作品は美しい。でも単純なだけではない「綾」が隠されているのです!それが「アブナイ・・」おのおののソロ。ピアノは梅村佑子さんが担当してくれました。
私はサンサーンスの序奏とロンドカプリチオーソに挑戦。この曲は本当に難しい・・・センスもテクニックも。

後半、「魔笛」から始まり「フンメル」「バセヴィッツ」そしてアンコール・・・「譜面がない!4番ヴィオリンどこ??」あたふたとするバックステージです。どうやら私たちの「春の笑い」が皆様にも伝わったようです。大成功に終わりました。本音は「どうなることか」と思っていた!そしてツアー5回無事終了。春の訪れにふさわしいコンサートでした!

2007年2月
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