ジャンマルク・ルイサダとの共演

2006年11月30日 山形テルサホール。
2006年12月1日 トッパンホールにて。

さて、今回は長年の友人でもあるジャンマルク・ルイサダ氏と共演します。
プログラムは、モーツアルトのヴィアオリンソナタ、変ロ長調、kv、454.ブラームスのヴィアオリンソナタ第2番、作品番号100.そして、プロコフィエフのヴィアオリンソナタ2番、作品番号94Aの3曲です。
この夏から練習に取り組み、また、2回ほどヨーロッパでも音楽会をやってきました。彼とは実は、25年来の友人でもあります。81年夏、アメリカのマルボロ音楽祭という室内楽のフェステイヴァルに、私が初めて行ったときのことです。なにしろ初のアメリカ大陸。言葉もろくに話せず、わからず。おろおろする毎日のなか、ひとりのフランス人の看護婦さんと知り合いました。クララです。
彼女は、体の具合が悪かった名チェリスト、ミッシャ・シュナイダーの世話をするために、フランスからわざわざやってきていました。さくらんぼを耳にひょいとかけて「どう、すてきでしょ?」という彼女と英語ができないもの同志、意気投合。
秋には、ヨーロッパで住家をさがしていた私と、パリ郊外で一緒に住むはじめての「ルームメート」となったのです!そして彼女の大親友だったジャンマルクと出会います。カリカリの頭に神経質そうなめがね・・その奥に好奇心いっぱいのいたずらっ子っぽいまなざしが、魅力的!すぐうちとけて、おいしいものの話、彼が、夢中になる「映画」の話、そして、もちろん音楽のこと・・夜もふけるのも忘れよく話したものです。

その後何回か共演しました。私たち2人ともが、なんと、同じ日にミラノで演奏会という事がありました。クララを含め10名ほどの友人たちが、パリから車を連ねてアルプスを越え、スカラ座までやってきました。下町の布問屋さんで買った黒いシルクに、表は、ジャンマルク。裏は、ホリゴメと、縫いとりして!あっちこっちの会場を駆けめぐる。もちろん、その衣装は、裏表変えながら!(笑)楽しい思い出です。

最近、よく一緒に弾きます。年代が近いせいもあって「求めているもの」が似ている気がします。彼とのリハーサルは本当に、半年前でも、1ヶ月前でも、コンサートの直前でも、常に真剣勝負。あくまでも、音楽を追求してゆこうという姿勢が見えます。全体を把握してから細部へ・・というよりは、一音一音造ってゆく・・・するとおのずから全体像が現れる・・といったアプローチに見えます。テンポ設定についても本番中はゆっくりだなあ・・・と、思って弾いてるのですが、後で聞いてみると骨組みがくっきり浮かび出てくる・・ことがあって納得。また、多大なる、映画の知識からかもしれません。豊富な、映像、いろいろな場面が、彼の頭のなかにたくさんあり、時々わたしたちは、音とはまったく関係のないような言い方をします。「ほら、あのオペラの一幕で、彼女が袖を振って悲しそうにしてるじゃない?あんな感じ」と私がいうと「うん、わかった」と、すぐ気づいてくれます。

私たちはだいぶ違う個性を持っているかもしれません。そこが、どのようにぶつかりあうのか。共鳴するのか。毎回わくわくする彼とのコンサートです。

いつもは、ボギーというラブラドールの黒い8歳の愛犬も一緒。旅もレストランもいつも一緒。ラディオフランスの生放送の時でさえ「犬のお通りを許す!」というお墨付きを、会館始まって以来いただいて!生放送中、ずーっとおとなしくピアノの椅子のところにいました。

残念ながら、飛行機には乗れないので、今は、パリでお留守番。
なにしろ、ステージに出てゆくときも、私はヴァイオリンを持ち、彼は犬の綱を持って登場するのですから!

彼、ジャンマルクからも「とても楽しみにしている」とのメッセージをいただきました。
乞う御期待!

2006年11月末日
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