音程

前回のYUZU NOTEで「ピタゴラスの音程」の話をちょっとした。少し掘り下げてみたい・・・

これは完全5度をラを基調として上下に取っていくとどうなるか・・・という音律で旋律がきれいに聞こえる。シャープのついた音は高め、フラットのついた音は低めになる。中にはマイナス20・・などというほとんど次の低音に近づくくらい低くとったほうが良い音(Ces)もある。実際はこれを、開放弦に合わせる。開放弦とは指を抑えないことで、要するに、ヴィオリンの場合だとG,D,A,E線の4本の弦、この音のことだ。

純正律・・というのは長3度、和音がきれいに聞こえる。第3音の取り方が鍵だ。

平均律・・というのは鍵盤楽器の場合、上記のようなことをやって行くと「ある調ではきれいでも他の調では合わない・・・」というところからその「中間」をとったもの。「異名同音」というように ces は h になり、fes は e になる。バロック時代からあり、現在のピアノの調律がこれだ。このために大バッハは48曲もの素晴らしい前奏曲とフーガを残した…と思っていたら原語の「tempere.・・・」とは、たとえば室温を調節する・・とか和らげる・・とか言う意味がある・・「平均」という言葉は誤訳・・・という説も聞いた。なるほどと思う。

またよくピアニストと演奏していて思うことが「音程のいいピアノ弾き」とそうでない人がいる・・・ということだ。同じ鍵盤をたたきなぜ音程が「ハモッテ」聞こえる人とそうでない人がいるのか?それは「音質」と「音間の強弱のバランス」による。キレイにハモる和音は第3音がちょっと弱め。

また自分一人で弾く時、ピアノと一緒に弾く時、室内楽で弦だけの響きの時、またオーケストラでソロを弾く時・・それぞれ微妙に音程は異なる。最近ギターは完全4度と長3度で合わせるので他の楽器・・・たとえばヴァイオリンと合わせるとき難しい・・・という話も聞いた。長3度と完全4度というのはまさに私が「3度和音の音階」を教えるときに使う練習方法だ!
「バスに合わせる」とはよく私が言うせりふなのだがこれも、音階が上がってゆく時…下がってゆく時のメロデイーでは同じ音でも取り方がちがう。下がる時妙に半音が高いと「滑らかな感じ」にはならない・・・

と、まあ挙げればかぎりない。
では何を持って「正解」とするのか。何が「気持のよい」音程なのか??

今のところは上記したように「旋律」にはピタゴラス、「和音」は純正律、「ピアノと弾く時」はその平均律に合わせる。そしてそれらの境目・・どこでどれを使うか・・・最終的には個人の好み、趣味・・という他ない。

よく「テクニック」といわれる言葉のなかに「完璧な音程がとれる」という要素が含まれる。音をはずすと「あ!あの人は下手だ」というのは誰にでもわかりやすいバロメーターだからだ。だからと言って、「外れていない音程」が「正しい音程」ではないのだ!!

もともと「音程が悪い」私がいろいろ探してやっていくと要するに「音程が良い」というのは「音楽がつつがなく流れる」ことだと思う。細かくやればるほど「何事もなかったように普通になって行く」もしかしたらアニメの制作、あの気が遠くなるような枚数のこまやかさにも似ているかもしれない。そうすると楽に音楽が流れる。音になりきれる。

「音楽」はおのずから現れる。

2009年8月 ブリュッセルにて
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