ブリュッセルテロ
ついに起ってしまった・・・という思いがぬぐいきれない。
3月22日友達からの「大丈夫ですか?」というメールの問いかけで事件を知った私は日本で演奏会中だった。
家族も友人も生徒たちも皆無事でいた事に心から感謝する。
空港の、それもチェックインカウンターといえば誰もが出入り出来る場所だ。バス停より頻繁にここにいる事の多い私はぞぉーっとした。送りに家族たちがこの場所にいたのもつい2週間前の事だ。
子供たちの友達にも、また知人にもイスラム系の人たちがいる。ラマダンの時、「歯磨きちゃんとしなさいね。もし間違って口の中に残ってしまったものを日中飲み込んだら大変でしょ」と10歳のお姉ちゃんが弟を諭していてびっくりしたことがある。サッカーの試合中、夏でもラマダン中は飲み物をとらない子供たち。いったいどこまでこの強制力があるのだろうかと不思議に思ったものだ。
イスラム国がイスラム教ではない。
私達がトルコで体感したあの優しさ、寛容さがイスラム教だ。
パリ、フランス。そしてブリュッセル、ベルギー・・・根底にある「フランス語圏」の事。フランス語という言葉が持つ曖昧性のなさ。以前外交的文書は誤解を招かないようにすべてフランス語で書かれていたという話を聞いた事がある。逆にこの言語ぐらい、「parce que(なぜなら)」の説明が多い言葉もなくおのずから考え方もそのようになる。三段論法は小学生から叩き込まれるから、理屈といったらかなうものではない!
移民と呼ばれる人たちもこの地で生まれ育った。勉強もフランス語系カトリックの学校に行っていた子が多い。アラブ学校というのはまだないかな?勉強ができた子もできなかった子もどこかで「この社会では自分は受け入れてもらえない」という疎外感を感じるときがある。サッカーチームでの様子。お金のかかるテニスや乗馬ではなくボールをけるだけの遊びサッカーにはイスラム系も黒人も多くいる。フランスでは「pied noir(黒い足)」という言い方をされるアルジェリア、モロッコからの移民も多い。しかし彼らの多くはフランス本土で職にもなかなかつけず不満を持ち国に帰る。
ヨーロッパでは大学の勉強・・「ダメ、次」と辞めていく生徒も多数いる。うちの息子だってそうやってマストリヒトから戻ってきてしまった。家でパソコンをしている後姿はちっとも楽しそうではない。しかしながら「本当にこの職業、学問は自分に向いているのだろうか?と将来を悩む事は悪い事ではないと思っている。「自分は何だろう?どうなるんだろう?社会は?愛するってどういう事?」さまざまな悩みに時間がかかり勉強の歯車と合わない事もあるだろう。
以前は学生運動として社会化したものだ。
でもその心の闇に宗教が付けこんだとしたら?
暴力が付けこんだとしたら?
若者のエネルギーがすべて「西欧悪」となってしまうケースが現在のテロリストたちだ。一人二人捕まえたところで予備軍は残念ながらたくさんいる。それに手を貸す人たち、知恵を貸す人たち。武器を調達して金儲けを企む輩。悪の連鎖は宗教という名のもとに若者を洗脳して国境を越えて結びつく。根底には欧米社会の価値観への嫌悪がある。欧米社会にありがちな高飛車目線、威圧的、肌の白くない人たちは見下す。
そしてすべてが「金儲け」それもごく一部の人たちの利益のために、という現実に失望する。怒りを覚える。「資本主義」「キリスト教中心」の世界に疑問を覚えたときアッラーの神の絶大なる夢と理想社会にたとえこの世での成就ではなくしても恍惚とした共感をおぼえるのだろう。
ベルギーは寛容な国だ。しかし寛容といい加減はちがう。フラマン、ワロン、ブリュッセルと3地域の行政にしばられているブリュッセルの街では音楽院のコンサートホールの壁もペンキがはがれトイレは私が最初にいった80年から変わっておらず教室の老巧化も進む。それを「お前が悪い、いやそっちだ」と責任転嫁。5人の大臣の署名が必要な音楽院修理案はいつも4人目ぐらいで政権がかわってしまい何も行われていない。
街では道路のトンネルの天井が落ちてきた。つい1か月前だ。閉鎖され、そのうちあれよあれよと数か所の天井崩落が始まった。10-15年前に指摘されていた「老巧化」をないがしろにしていたつけだ。すべて中心部に向かうトンネルが封鎖されその交通渋滞といったら想像を超えるものがあった。レストラン、数々の店の売り上げも4分の1に落ちたという。
そんないい加減さに付け入られたテロリストの巣の存在、モーレンベーク。
テレビでは宗教家はもっと若者に密接に向き合って話をしてゆくべきだと言っていた。イスラム教は殺しの宗教ではない。
家族の中でそういう兆候が出だした子供たちにどうやって対応していくのか?その討論も行われている。
しかしながら洗脳されてしまった彼らの行動は抑えられない。
このエネルギーを人類の何かの発展、喜びの為に使うことはできないのか?
闇は深い・・・