バッハの3連符、3拍子

夏休みにバッハを仕込んでいる。2番のパルテイータだ。これは近年よく弾いているのだが夏に録音がある。シャコンヌに至るまでの道のりを辿っている。

今朝1楽章のアルマンダを練習していたらなぜか3連符の存在が気になった。今まで何十回と弾いてきたのだが、3連符をあまり気にしたことはなかった。たしかに(あまり)ある。
次の2楽章に出てくる附点つきリズムと3連符の関係をどうするか?同様にするバロック方式?あるいは区別するモダン(今)の弾き方のことで議論した事はあったのだが・・・4拍子の中にでてくる3連というのはなんというか「ふらふら」と揺らぐ。

そうこうしているうちに次の2楽章クーラントに行った。これもまた3拍子。3がつく、それでは他は?と見てみると何とこの舞曲形式のパルテイータに関しては全てが3拍子だったり、または3連が使われている事に気付いた。サラバンド(3楽章)ももちろん3拍子。ブーレは2拍子だが書かれているのは3連符。シャコンヌに至ってはまさに3拍子。踊りの曲の時に3と言う割り切れない拍は足の運びもままならないだろう。実際メヌエットを踊ってみてもワルツを踊ってみてもなかなかうまくいかない。

これは日本人だから・・の特徴もある。日本の馬子歌も民謡も盆踊りも3拍子と言うのはあまりお目にかからない。ふら~と不安定になるリズムが不得意なのもそれなりの民族性というか歴史がある。ヨーロッパ発生の知られている舞曲には3拍子が多い。あるいはバグパイプのような通奏低音、ぶ~っとなっている低音の上に即興的にメロデイーがつくアイルランドもの。ハンガリージプシー系は3も4もありだ!
そういえばインド・シタールの音楽もバプパイプのような常時流れる伴奏ならぬ後奏のような上に乗っかっている。チェリストのヨーヨーマが「シルクロードアンサンブル」なるものを作り絵画、遺跡だけではない音の世界によるシルクロード紀行をしたことがある。
中央草原を貫く甲高い女声は馬や家畜を呼ぶだけではなく大切な伝言を運ぶためのものであった。馬頭琴・・という馬の頭をかたどった弦楽器もある・・・

リズムは??シルクロードを通って行く間に3拍子もなくなってしまったのかもしれないけれど民族音楽の研究はこんな単純な話ではないだろうからひとまず横に置いておこう。

バッハに話をもどすと、他の5曲のソロソナタとパルテイータにおいても3拍子というのは舞曲のみ。元々形式があるものに当てはめて行った彼のパルテイータとソナタの全集だ。3拍子の曲は1番のソロソナタのシシリアーノ、2番のパルテイータのクーラントとサラバンド、2番のソロソナタのアンダンテ、そして今取りあげた2番のパルテイータのクーラントとサラバンド、それにシャコンヌ、3番のソロソナタのアダジオ、これも附点のリズムが多く学生の頃「このリズムはキリストが十字架につけられて歩む時の足の不規則さに基づく」と聞いて「へ~」っと感嘆したことがある。それが事実かそうでないかは演奏家の私にとっては二義的な事で、それより手を打って納得できることがなにより。そのへんが演奏家の醍醐味かな?
横道にそれたがあと一つ残る3番のパルテイータ。ここまで来るとバッハのフランス傾倒も極み、表題もすべてフランス語となる。ルーレ、3拍子、メヌエット3拍子。
全体から見たら3分の2ほど?

バッハに至るまでにいろいろな作曲家が舞曲形式で曲を書いている。舞曲の3拍子は決まってクーラントとサラバンド。シシリアーノ、それにシャコンヌという超大詩を描いたのもバッハの冒険だ。

しかしながら全くゼロからこのような音楽を書きだしたヨハン・セバスチアン・バッハ。どんな思いで3連符を使ったのだろう・・と思うと想像がふくらむ。

3拍子の使い方、そして3連符の使い方・・・本日の大発見!

2012年7月18日 ブリュッセル
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